毎日同じ道を通った。
風に押されても、
陽射しに灼かれても、
横なぐりの雨に濡れても、
毎日同じ道を行った。
毎日同じ道を通うべきだったから。
ある日声が聞こえた。
振り返ったけど誰もいなかった。
そしていつもの道を通った。
その声をどこかで聞いたようにも思った。
思ったこともまた忘れ、
同じ道を通い続けた。
みんな同じようにその道を通っていたから。
またある日声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
行き過ぎた季節の彼方に、
置いてきた何かに似ていた。
けれどまた同じ道を歩いた。
歩いては戻ってきた。
その声について思い巡らせる時間を
どうしても見つけられなかった。
何年か経ったある冬の初め、
いつもの道の途中で気づいた。
あの声を知っていたことに。
私は呆然とした。
そして引き返し、
二度と同じ道を通うことはなかった。
「これが本当の望みなの?」
その声は私だった。
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絹井銀竹