気配を感じ、目が覚めた。
窓のカーテンが揺らぎ、部屋の中に月の光を浴びた天使ミカエルが立っていた。
ミカエルは私の手を取り、窓から大きく外へ飛んだ。
夜を越え、宇宙に出て星々を過ぎ、ある星に降りた。
そこは白く明るく全方向に光を放つ星だった。石畳の庭園を抜け、白く大きな石造りの門が天に届いている場所に出た。辺りには丸く厚みのある雲と天使の羽が漂い、温かい空気が満ちていた。ここは愛についての知恵の星だとミカエルが言った。私はその日、無意味な悲しみに負け、泣きながら眠っていた。ミカエルは私を噴水のある広場へと連れて行き、この甘い水を飲むように言った。私が口を潤すと、もう一度味わって飲むようにと言った。私はもう一度飲んだ。水には振動があった。私には甘い水が足りないのだとミカエルが言った。そして笑い、また私を天高くへ運んだ。
次の星は、全体がクリスタルで出来ていた。虹色に輝く透明なクラスターの連なり。大小のオベリスクのような突起状がどこまでも続き、光が眩しく眼を射った。
この星は豊かさについての知恵を示しているとミカエルが言った。クリスタルはその象徴そのものであると。
そこはエッセンスの桃源郷、純粋な、輝く粒の舞うホログラムだった。川が流れていた。水は清らかで、星全体が浄化された後の粒子を空間に揮発させていた。
豊かさはピュアなものの中に存在しているのか、と私は聞いてみた。ミカエルは穏やかに私を数秒見つめた。そしてまた私の手を取り、高く舞い上がった。
三番目の星は地球のどこかに似ていた。天の裂け目から大きな滝が流れ落ち、水は限りない豊かさの気を放ち、見たことのない木々が立ち並んでいた。山でも渓谷でもなく、球体を感じさせる密度の濃い空気に包まれていた。そこはパノラマであり、スクリーンであり、バーチャル的で同時に触感的であった。様々な種類の岩石が滑らかに点在し、それぞれが異なる色に発光していた。
ここは希望についてのヴィジョンが顕現されている、とミカエルが言った。私はただ無限を感じた。とめどない無限の神髄が渦巻いていた。大地は足元から私の体を貫くように恵みをもたらし、それは全身から溢れ出した。それを見たミカエルが、倒れないように私を支えた。
窓の閉じる音がした。
私は起き上がり、夜が明け始めているのを見た。
自分が眠っていたかどうかもわからなかった。
窓の下に一枚、白い羽が落ちていた。
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絹井 銀竹